I
(1)五十音図タ行第五段の仮名。 歯茎破裂音の無声子音と後舌の半狭母音とから成る音節。
(2)平仮名「と」は「止」の草体。 片仮名「ト」は「止」の初二画。
〔奈良時代までは, 上代特殊仮名遣いで甲乙二類の別があり, 発音上区別があったとされる〕
II
(係助)
〔上代東国方言〕
係助詞「ぞ」に同じ。

「伊香保ろに天雲い継ぎかぬまづく人~おたはふいざ寝しめとら/万葉 3409」「荒し男のいをさ手挟み向かひ立ちかなるましづみ出でて~我(ア)が来る/万葉 4430」

III
(副)
そのように。 副詞「かく」と呼応して用いられることが多い。

「~にもかくにも」「~やあらんかくやあらん」「~につけかくにつけ」

とかく(副)
とにかく(副)
ともかく(副)
IV
(接続)
〔接続助詞「と」から〕
「すると{(1)}」に同じ。

「皆で話をしていた。 ~, 突然悲鳴が聞こえた」

V
将棋で, 「と金」の略。
VI
と【ト】
洋楽の音名。 欧語音名 G に当てた日本音名。 基準音イより短七度高い音。
VII
と【人】
「ひと」の省略形。 「おとと(弟)」「はやと(隼人)」「ぬすっと(盗人)」「すけっと(助人)」などの「と」がこれにあたる。
VIII
と【利・鋭】
〔形容詞「とし(利)」の語幹から〕
するどいこと。 すばやいこと。 多く「利目(トメ)」「利心(トゴコロ)」など複合した形でみられる。
IX
と【十】
数のとお。 じゅう。 多く名詞の上に付いて, 接頭語的に用いる。

「~文(モン)」「~月」

X
と【外】
(1)そと。 ほか。

「家の~」「~に出でぬ/竹取」

(2)便所。 厠(カワヤ)。

「~エマイル/日葡」

XI
と【徒】
仲間。 同類の人たち。 やから。

「無頼の~」「忘恩の~」「学問の~」

XII
と【戸】
〔「門(ト)」と同源〕
窓や出入り口, 門・戸棚などに取り付け, 開閉して内部と外部とを仕切ったり, 出入り口を閉ざしたりするための建具の総称。

「雨~」「~をあける」

XIII
と【所・処】
ところ。 「隈所(クマト)」など複合した形でみられる。 「ふしど(臥所)」「ねど(寝所)」のように「ど」ともなる。
XIV
と【斗】
(1)尺貫法の容積の単位。 一斗は一〇升, 約18.039リットル。
(2)和船の積載量または材木の実体積の単位。 石(コク)の一〇分の一, 一立方尺(約0.0278立方メートル)。
(3)二十八宿の一。 北方の星宿。 射手(イテ)座の南斗六星にあたる。 ひきつぼし。
(4)日本建築の柱などの上に設ける四角い材。 ます。 ますがた。
XV
と【砥】
砥石(トイシ)。
~の如(ゴト)し
〔詩経(小雅, 大東)〕
道路などが砥石のように平坦であることにいう。
XVI
と【跡】
あと。 「跡絶(トダ)える」「跡見(トミ)」など複合した形でみられる。
XVII
と【途】
〔古くは「ど」とも〕
みち。 旅の道すじ。
~に就(ツ)・く
出かける。 出発する。

「帰国の~・く」

XVIII
と【都】
(1)みやこ。
(2)地方公共団体の一。 東京都がこれにあたる。
(3)「東京都」の略。

「~の方針」「~条例」

XIX
と【門・戸】
(1)家の出入り口。 戸口。 かど。 もん。

「後つ~より逃げ出でて/古事記(中訓)」

(2)海峡などの, 両岸がせばまった水流の出入りする所。 水門(ミト)。 瀬戸。

「天離る鄙(ヒナ)の長道ゆ恋ひ来れば明石の~より大和島見ゆ/万葉 255」

XX
と【音】
〔「おと」の「お」が脱落した形〕
おと。 ひびき。 こえ。

「風の~の遠き我妹が着せし衣/万葉 3453」


Japanese explanatory dictionaries. 2013.

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